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顕微分光膜厚計におけるDLC膜の計測評価技術

4.測定・運用事例の紹介『摩擦界面における摩擦メカニズムの解明』

DLCおよび窒素を含んだカーボン系膜であるCNxの摩擦メカニズムを解明するためピン・オン・ディスク型の摩擦試験機とOPTMを組み合わせた試験機を作成された。摩擦試験機のディスクの材質を光が透過するサファイアにすることでディスク越しに摩擦界面を直接その場観察が可能です。(図11)のReflectance spectroscopyがOPTMです。

図11 ピン・オン・ディスク型の摩擦試験機とOPTMを組み合わせた試験セットアップ
図11 ピン・オン・ディスク型の摩擦試験機とOPTMを組み合わせた試験セットアップ

この試験機を用いて、CNx膜の油中おける摩擦中のリアルタイムなその場観察を行ったところ、0-400サイクルにかけて摩擦係数は0.052から0.028へ急激に減少しその後緩やかに減少しました。最後は0.022でした。(図12)

図12 摺動サイクルと摩擦係数の計測結果
図12 摺動サイクルと摩擦係数の計測結果

この時、OPTMでは、光学モデルを、Sapphire/油膜/粗さ/構造変化層/CNとし、油膜・構造変化層それぞれの厚みとnkおよび粗さを求めました。

また、OPTMで得たこれらの値から、CNx膜の表面には構造変化層が存在し、その厚みは0.7nmから5.7nmまで変化すること、また、摩擦中のメカニズムとして、潤滑状態が境界潤滑:相手材と接しているまたは距離が極近い領域と流体潤滑:相手材との間に流体つまりオイルがある領域が0-200サイクルにかけて流体潤滑の比率が多くなります、また、構造変化層と油膜のnkから体積分極率を算出し、その変化によりファンデルワールス力が変化し、その結果、油膜分子が構造変化層極表面に吸着し、薄い吸着分子膜形成されることで境界潤滑領域部分の摩擦係数が減少したことがDLCおよびCN膜が低摩擦を発揮するメカニズムであることを新たに発見・示唆されました。

 特に構造変化層と油膜の体積分極率の変化を比較すると、油膜の体積分極率は0-200サイクルかけて1.1倍になり、それに対し、構造変化層の体積分極率は0-400サイクルにかけて1.3倍になり、摩擦を繰り返す度に摩擦係数が低下する様子との相関から、構造変化層がDLCの低摩擦の発揮に特に影響が大きいという発見・示唆は、摩擦中のメカニズム解明において非常に興味深く重要であると考えます。

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