「表面も内部もワンショット」光波動場三次元顕微鏡
3.原理
3.1 光波動場イメージング
同社の開発した「光波動場イメージング」はその名のとおり「光の波動の場(三次元空間分布)」に基づいて測定対象を画像化・視覚化する手法で、それは波動光学と計算科学の高度な融合によって実現されたものです。その根本にある発想は、「不正確な測定結果」を修正するための複雑な機構や補正を一度すべて捨ててシンプルにすることです。今日では、光の波動を表す値の一つである「位相」を用いる測定手法がいくつか存在しています。しかしながら、従来法ではこれを記録するための記録光学系の限界や制約のために、光の波動そのものを「正しく」記録するには至っていないのが現状です。本技術の特徴は、拡大像の記録と補正という発想ではなく、波動の場をありのままに正しく記録するアプローチにあります。正しく記録されているならば、複雑な機構や補正処理はもはや必要ありません。この新しいアプローチによって、従来の測定法では困難あるいは不可能だった新たな測定方法が実現されました。その代表的なものとして、三次元空間の歪みのない記録と像生成が可能な「デジタルリフォーカシング」、波面形状の変化を用いた試料形状や透明体の可視化手法である「OPD イメージング」が挙げられます。
3.2 デジタルリフォーカシング
一般的なイメージング装置は対象物、結像光学系、イメージセンサの三つで構成されます。結像光学系はイメージングの要になる存在ですが、それはある一つのフォーカス面を前提に補正・設計されており、物理的なスキャンなしに複数のフォーカス面を見ることは難しいです。一方、スキャンを避けるために被写界深度を深くすることで全体にフォーカスを合わせようとすると、原理的制約で細部が見えません。また、結像素子に内在する理想的な特性からのずれ(収差)もまた、悩ましい問題です。これらの課題を根本から解決するために、本技術は物理的な結像光学系に代わり、コンピュータが「理想的な結像光学系」をシミュレーションします。この理想的な結像光学系は、独自開発の「波面センサ」からのデータを境界条件とし、波動方程式に基づいて三次元空間の任意の面へフォーカスされた像を生成します。これにより、記録時にフォーカスを合わせなくても、記録した後で無段階にフォーカス調整しながらじっくり観察できます。
3.3 OPDイメージング
光波動場イメージングで得られる測定値は、光波の振幅と位相の三次元分布です。この光振幅と位相は、物質の透過率や屈折率に起因して変化するため、見方を変えると本技術は試料の透過率や屈折率の三次元分布を取得できる手法とも言えます。例えば、図2のようにある厚さと屈折率を持つ透明な形状を光波が通過したとき、そこには光路差(Optical Path Difference; OPD)が生じます。この光路差は光波の位相からnmの分解能で求められ、これを用いて高さや厚さの方向にnmの分解能の形状計測が行えます。また、厚さが既知であれば高精度な屈折率測定も可能です。ところで、従来の光波の位相を用いる測定法にはフォーカスという概念がないことが多くあります。それは図2から明らかなように、光波の位相変化は通過する全光路の積分であって、特定の面という概念がないためです。一方、光波動場イメージングにおいては、光波の振幅・位相情報と、複数の条件で記録された光波データに基づいて、特定面へのフォーカス選択性を持たせています。その結果、例えば試料内部にある透明粒子の位置を特定したり、フォーカス面外の散乱ノイズを抑制することができます。このような処理は、正確な光波の記録手法と、高速演算システムの両輪によって実現されたものです。
図2 OPDイメージング
※本記事は『メカニカル・サーフェス・テック』2025年2月号の掲載内容を一部編集したものです。
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