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【入門】 キャピラリー電気泳動

3.キャピラリー電気泳動における分離方式<動電クロマトグラフィー>

電気的に中性である複数の成分が試料中に存在している場合には、それらを電気泳動で分離することは不可能でした。しかし、巧妙な方式が工夫されて、本来は電気泳動しない試料もキャピラリー電気泳動の対象になる局面が開かれました。

硫酸ドデシルナトリウム(ドデシル硫酸ナトリウムと呼ばれることが多く、SDSと略称されています)は代表的な陰イオン性界面活性剤です。その陰イオンは、ある濃度(限界ミセル濃度(critical micelle concentration: CMC))以上になると100個近くが会合して、ミセルと呼ばれる負に荷電した集合体を形成します。

キャピラリー電気泳動において、緩衝液にSDSをCMC を充分に超える濃度になるように加えておきます。ミセルは、プラス極側にVmc(符号マイナス)の速度で移動しようとしますが、速度がVeoの電気浸透流に逆らいきれず、マイナス極側にVeo+Vmcの速度で移動して行きます。SDSミセルは、様々な物質を捉えます。すべてが、ミセルに取り込まれる成分は、ミセルと行動を共にするので、もっとも長い時間を要して、検出部にたどり着くでしょう。他方、まったくミセルに取り込まれない成分は、電気浸透流と同じ速度で移動して、比較的に速やかに検出部に行き着くでしょう(図3)。

SDSミセルの添加による試料分子の可溶化

【 図 3 】

つまり、試料成分はミセルへの親和性、言いかえれば分配係数、が低いものから高いものへと、順番に分離されて検出されることになります。一群のフェノール類の混合物を試料としますと、見事に各成分が分離されます(図4)。

分配係数の差により分離

【 図 4 】

ミセルに親和性の高いものといえば、親油性のもの、あるいは両親媒性のものがあります。

クロマトグラフィーにおいては、移動相と固定相のあいだの分配係数の差異にもとづいて、試料成分を分離しています。上記の場合には、ミセルは固定されてはいませんが、擬似的な固定相と見なすことができます。それで、電気泳動の一種ではありますが、この方式にはミセル動電クロマトグラフィーという名称が使われています。動電という用語は聞き慣れないと感じる方も多いでしょう。これは、電気浸透が動電現象と呼ばれるものの一種であることに、由来しています。

ここでは、荷電のないものを取り上げて話を進めてきましたが、荷電を持っていても、ミセルに親和性があれば試料になりうるでしょう。ただし、この種のものは、取り込まれるとミセルの電気泳動挙動を左右するので、副次的な要素が加わることは、承知しておかねばなりません。SDS以外の界面活性剤を用いる、あるいは二種類以上の界面活性剤を用いることによって、ミセル動電クロマトグラフィーに、色々の変種を導入できます。

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