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繊維表面のゼータ電位

2.平板状試料の表面ゼータ電位測定法の原理

平板状あるいはシート状試料の表面のゼータ電位測定では、森・岡本の式2)を用い、試料表面の電位によって接する液体に生じる電気浸透流を利用して、間接的に固体表面のゼータ電位を求めています。

(1) 電気浸透流
一般に測定用セルには石英製のセルが用いられますが、石英の等電点は2~3で、通常セルの表面はマイナスに帯電していますので、セル内壁付近には溶液中のプラス電荷のイオンが多く存在しています。
セルに電圧が印加された際、このセル壁付近のプラスイオンは陰極側に引かれて移動し流れが生じます。セルは通常密閉系であるため、セル壁近傍の流れは還流され、セル中心付近では逆向きの流れが生じることになります。
セル内部のこの流れを電気浸透流といいます(図1参照)。

電気浸透流 -セルは通常密閉系であるため、セル壁近傍の流れは還流され、セル中心付近では逆向きの流れが生じることになる。セル内部のこの流れを電気浸透流という
図1.電気浸透流の概念図

(2)平板試料用セル
図2に平板状試料の表面ゼータ電位測定用セルの概略図を示します。

平板状試料の表面ゼータ電位測定用セルの概略図
図2.平板試料用セル

箱状の石英セルの下面に平板状もしくはシート状の試料を密着させ、セル内部にモニター粒子懸濁液を注入する構造になっています。標準のモニター粒子としては、ポリスチレンラテックス(粒子径約500nm)をヒドロキシプロピルセルロース(Mw=30000)でコーティングして、ゼータ電位をほぼゼロに抑えたものを用います。
セル深さ方向の各レベルでモニター粒子の電気泳動測定を行ないます。モニター粒子のゼータ電位はほぼゼロとなりますので、その電気浸透流は、セル上面と平板試料の電荷状態によって生じた流れを表すことになります。また、電気浸透移動度の縦方向の変化を小さくして精度を上げるために、平板試料用セルの内壁をポリアクリルアミドでコーティングし、電荷をほぼゼロにしています。

(3)森・岡本の式
電気浸透流のプロファイルの解析は、境界条件の異なるいくつかの理論式が報告されています3-5)が、ここでは、直方体型のセルにおいて、上下面の浸透流の速度が異なる場合をモデルとする以下の森・岡本の式を用います。

 Uobs(Z) = AU0(Z/b)2 +ΔU0(Z/b) + (1-A)U0 +Up
   Uobs(Z):位置yにおいて測定される見掛けの速度
   Z:セル中心からの距離
   A=1/[(2/3)-(0.420166/k)]
   k=a/b:セル断面の辺の長さa,bの比(a>b)
   Up:粒子の真の移動度
   Uo:セル上下面での溶媒の流速の平均
   ΔUo:セル上下面での溶媒の流速の差

ここで、Uobs=Upとなる位置を静止層(静止レベル)と呼び、観測される移動度は真の粒子の移動度となります。よって、セル深さがセル幅より小さな場合(k≧5)、測定位置を上下に移動させて各セル位置での移動度を測定し、そのデータをもとに最小自乗法で近似し、係数比較して、粒子の真の移動度Upを求めます。同時に、この式からU(セル上下面での溶媒の流速の平均)およびΔU(セル上下面での溶媒の流速の差)が計算されるので、セル上下面の各々の移動度が算出でき、上面に設置した平板試料の表面ゼータ電位を求めることができます。

参考文献  2) 森裕行,岡本嘉夫:浮選,27,117 1-124 (1980)
   3) Smoluchowski,M.:in"Handbuch der Electrizitat unddesMagnetismus,
"L.Greatz,Ed.,Barth,Leipzig,1921
   4) White,P.:Phil.Mag.,7(Suppl.No.155),23(1937)
   5) Komagata,S.:Res.Electrotech,Lab.(Jpn,).March (1933),p348

 

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